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CO2レーザーの機能と活用分野

1. CO2レーザー彫刻機・カッターとは

CO2レーザー(二酸化炭素レーザー)はガスレーザーの一種で、9〜11µmの中赤外線を放射し、特に10.6µm(まれに9.3µmや10.2µm)で最も強い出力を示します。Nd:YAGレーザーやファイバーレーザーと並び、産業用レーザー技術の重要な存在です。最大80kWの平均出力と100kJのパルスエネルギーを発生させることができ、最大15%というガスレーザーとしては高い効率を持ちます。コストが比較的低いため、有機素材の切断やマーキングだけでなく、金属加工にも広く利用されています。CO2レーザーは、1964年に米国ベル研究所のクマール・N・パテル氏によって開発されました。

2. CO2レーザーの機能

レーザー光源の動作には励起が不可欠です。パルスCO2レーザーでは、CO2、N2(窒素)、He(ヘリウム)の混合ガスにアンテナを使い、数十メガヘルツの電磁波を照射して励起を行います。一方、連続発振CO2レーザーは、最大約2万ボルトの高電圧によるグロー放電で励起されます。

励起によってCO2分子は高いエネルギーレベルに達し、分子の回転や振動として共振器内に蓄積されます。ここに適切な波長(中赤外線)の光子が当たると、「誘導放出」が発生し、蓄積されたエネルギーが光子として放出されます。このとき、入射した光子は「双子光子」を生み出し、CO2分子のエネルギーをその分だけ減少させます(エネルギー保存則)。CO2分子が十分に励起されていれば、誘導放出によって光子の数は指数関数的に増加し、いわゆる「雪崩効果」が起こります。

生成されたレーザー光線は、ミラーを使って加工対象に向けて導かれます。光線は加工物の真上に配置されたカッターヘッド内で集光されます。レーザーが約20mmの径でカッターヘッドに入射すると、集光レンズによって焦点面で約0.1mmまで絞り込まれます。

カッターヘッド内やレーザーが加工物に当たる周囲には、ガスが供給されることが多くあります。酸素を使用すると、加工物を酸化させて切断を促進できます。一方で、主に窒素やアルゴンといった不活性ガスは、酸化を抑え、仕上がりをよりクリーンにするために用いられます。

焦点(レーザー光線が加工物に集光されるポイント)では、切断や彫刻を行うたびに、材料の蒸発温度を超える高温が発生します。この蒸発によって彫刻が施されたり、切断溝(カーフ)が形成されたりします。

3. CO2レーザのデザイン

CO₂レーザーにはいくつかのタイプがあり、構造が重複する場合もあります。代表的なタイプとして、縦流型、横流型、密閉型、導波路型、横方向励起大気圧(TEA型)などが挙げられます。

縦流型・横流型レーザー

この設計は比較的シンプルで、高出力レーザーでよく使用されます。縦型および横型フローレーザーでは、レーザーガスが真空ポンプによって放電管に連続的に吸引されます。直流放電により、混合ガスに含まれる二酸化炭素の一部が一酸化炭素と酸素に分解されます。管システム内の複数のポンプにより混合ガスが連続的に循環し、熱損失をより効率的に除去することができます。

密閉型レーザー

このタイプのレーザーでは、ガス混合物をポンプで入れ替えるのではなく、水素・水蒸気・酸素を追加することで成分を維持します。これらの成分が加わることで、発生した一酸化炭素(CO)を白金電極を使って二酸化炭素(CO₂)へと変換します。この反応により、CO₂が触媒的に再生される仕組みになっています。

導波路型レーザー

導波路型レーザー、またはスラブレーザーは、2枚の電極を導波路として利用し、直方体の共振器を持つ設計です。この共振器の断面は高さに対して幅が極めて狭い(例:高さと幅の比が10:1)のが特徴で、そのため体積に対して表面積が大きくなります。この構造により、熱を効率的に放散できる仕組みになっています。

横方向励起大気圧(TEA)レーザー

横方向励起大気圧レーザーとは、光軸に直交する方向の放電により励起される横励起方式のCO2レーザーで、最大1気圧の高圧ガスと100ナノ秒以下の短いパルスを必要とする場合に使用されます。このタイプのレーザーでは、1マイクロ秒未満の短いパルスで放電電圧をガス流にかける設計になっています。これにより、放電がアーク放電(電極間で持続的に放電する現象)になるのを防ぐことができます。

4. CO2レーザーの主な用途

CO2レーザーは、10~400ワットの出力で、木材、織物、プラスチックなどの薄い有機材料の切断や彫刻に使用されます。PMMA(アクリル、プレキシガラス)のカットでは非常に高い品質を実現し、材料の表面と同様に透明で美しい切断面が得られます。

1~6キロワットといった高い出力の場合、産業分野において金属の溶接、硬化、再溶解などにも対応します。近年では、酸化物の発生しないレーザー切断用として、CO2レーザーの需要はますます高まっています。 レーザー切断機は主に板金加工の小ロット生産に向いており、大量生産の場合は、パンチング加工の方がコスト面では有利です。

幅広い業界で活躍するCO2レーザーですが、特に自動車産業ではエアバッグ用ダッシュボードの穴あけにレーザー加工機が多く使用されています。また、天井材やサイドパネルもCO2レーザーで製造されています。

衣料品業界でも、生地の裁断からジーンズの表面加工まで、レーザー技術はさまざまな場面で使用されており、化学薬品や研磨材を使用しないため、より環境にやさしい加工方法の一つとして重宝されています。

GRPやCRPなどの繊維強化プラスチックの切断において、今後、よりCO2レーザーの需要が期待されます。 繊維強化プラスチックは、自動車、航空、風力エネルギー産業などにおいて、持続可能性、資源効率、気候保護といった現代の重要な課題への解決策の一つとして注目されています。

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