--------------------------

レーザー加工における火災発生のリスクについて

Nadine Schall
9. September 2024 • 9 min

レーザー加工で火災が発生する可能性は?

レーザー加工機の導入を検討する際、火災発生の可能性は大きな懸念事項の一つだと思います。レーザー加工における安全リスクについて結論を急ぐのではなく、レーザー加工のプロセスや安全対策について十分な理解を得ることが大切です。本記事では、出力の最適化やレーザー加工機の火災リスクを低減するための対策など、より安全にレーザー加工を行っていただけるようさまざまな安全対策をご提案いたします。

火災発生を引き起こす要因

レーザーカッター・加工機の使用における火災発生のリスクは、その切断のメカニズム自体に原因があります。レーザー加工機は、レーザー光によって熱を発生させて切断や加工を行います。このレーザー光が素材と相互作用すると、非常に高い温度に達し、素材が燃えたり蒸発したりする可能性があります。さらに、レーザーの出力設定が適切でない場合は、素材が発火し、煙や有害なガスが発生する恐れもあります。

また、レーザーカッター内部に粉塵が蓄積すると、火災の可能性が高まる要因となります。粉塵の粒子は非常に微細で、表面積対体積比が大きいため、空気や酸素と常に接触しており、同じ素材の固体と比較して発火しやすくなります。

火災発生のリスクに加え、熱出力は切断の品質にも直接的な影響を及ぼします。過剰な熱は変形や焦げの原因になり、素材の損傷や加工精度の低減につながります。熱出力を正しく理解し管理することで、清潔で正確かつ高品質な切断ができ、レーザーカット作業の最適なパフォーマンスと安全性を確保することができます。

材料に合わせて最適な熱出力の設定を

熱出力はさまざまな要因によって左右され、レーザーカッターのパフォーマンスに影響を及ぼすため、効率的な切断と潜在的なリスクを確実に回避するためには、その要因を理解することが大切です。下記に、適切な熱出力の管理に欠かせないポイントをまとめました。

- 出力設定: レーザーカッターにはレーザーの照射密度を調整する機能があり、切断中のレーザー光の強度の制御が行えます。出力を調整することで、表面の熱の蓄積を抑え、炭化を軽減できます。

- 切断速度: 高速度の場合にはレーザーエネルギーが効率的に拡散され、速度が遅くなると、より多くの熱が発生します。切断する素材に合わせて最適な速度を設定することで、熱出力を制御します。

- 素材の特性: 各素材はそれぞれの特性によってレーザーの反応が異なるため、熱の発生に与える影響も異なります。組成、厚み、基板の種類といった要素が、切断中の表面熱に影響します。

- 焦点とビーム径: 焦点とビーム径は切断に大きく影響します。焦点を正確に合わせたり、ビーム径を小さくすることで、レーザーの出力が集中し、熱出力を最小限に抑えながら効率的な切断を可能にします。

- エアアシスト: エアアシストで圧縮空気を吹き付けることで、粉塵の加工物への付着を防ぎます。また、全体の熱出力にも大きな影響を与えます。

レーザー加工機を操作する際に上記の要因を考慮することで、パフォーマンスを最適化し、過剰な熱発生によるリスクを最小限に抑えることができます。

トロテック・レーザーの安全性向上のためのリスク低減対策

トロテックのレーザー加工機は、生産性と効率性を最大限に引き出しながら、リスクを最小限に抑えるよう綿密に設計されており、さまざまな安全機能を装備し、火災の危険性を大幅に軽減します。欧州連合の安全、健康、環境保護に関する規制に適合していることを示すCEマークを取得し、機械指令2006/42 /ECの厳しい要件も満たしています。製造業において安全対策は不可欠です。トロテック製の全てのレーザーカッターは レーザークラス2, に分類されており、安全な操作を保証します。クラス2の場合、レーザー機器管理者の任命や保護メガネ着用など、レーザー光線による障害の防止対策を必要とせず、安全かつ簡単に操作が行えます。これにより、操作プロセスが簡素化されるだけでなく、関連コストも削減され、訓練を受けることで、従業員の誰もが機械を操作することができるのです。

クラス2に分類されているほか、リスク低減を実現する優れた排気システムを備えている点もトロテック加工機の主な特長の一つです。この 排気システム は、切断中に発生する粉塵や煙、微細な粒子を効果的に除去し、火炎の発生を最小限に抑え、安全な作業環境を提供します。さらに、安定した高速気流により火災リスクがさらに低減され、途切れることなくスムーズに作業を進められるだけではなく、木材に彫刻を施す際の焦げ付き防止といった製品の品質向上にも貢献します。

また、ほぼ全機種にトロテックの レーザー加工用ソフトウェア「Ruby®」が搭載されています。Ruby®を使用することで、マシンから排気システムまで、すべてのコンポーネントをリアルタイムで監視・制御できるようになります。この集中型スマート制御システムにより、Ruby®内で障害を迅速に検知・管理でき、全体のメンテナンス性と安全性を向上させます。さらに、ログファイルには過去に実行した動作やイベントの履歴が記録されるので、細やかな分析や将来的な改善に活用できます。

また、Ruby®では、使用するガスの種類や供給量をパラメータとして保存することで、最大3種類のガスを一元管理できるガスキットに対応しています。これにより、切断の精度や性能が向上するとともに、火災リスクをさらに抑えることが可能です。


アクリルなどの可燃性素材に対しては、オプションで温度センサーを装備できます。作業エリアの温度が危険なレベルに達すると、オペレーターが迅速に作業を中断できるよう、音声による警告を発します。

その他の火災リスク対策

トロテックのレーザー加工機は安全性に最大限に配慮して設計されており、火災が発生する可能性は極めて低いですが、さらにリスクを低減するために、加えて下記の安全対策を講じることをお勧めしております:

- 加工機に端材やゴミが残っていると発火の恐れがあるので、使用前に掃除しましょう。
 
- レーザー加工の作業エリアにアセトンといった洗浄用溶剤などの可燃物を保管しないでください。

- 危険を察知したら、安全スイッチやボタンを押して電源をオフにし、即座にレーザー加工を中止してください。

- いつでも使用できるように加工機の近くに消火器を設置し、障害物や機器などで遮らないようにしてください。

- エアアシストで発火しやすい粉塵を素早く除去しましょう。

レーザー加工に適さない材料を使用しないこと

特有の化学組成により、レーザー彫刻・切断に適さない材料もあります。そのような材料をレーザーで加工すると、人体に有害なガスや塵を発生する恐れがあります。特に難燃性の材料は、臭素原子が含まれていることが多いので注意が必要です。難燃性材料については、含まれる成分の詳細をメーカーに問い合わせることをお勧めします。 適した材料および適さない材料の一覧 は、よくある質問(FAQ)でご確認いただけます。

トロテックのレーザー加工機は、上記のポイントをご理解いただき、正しく使用すれば、火災の危険性を心配することなくご利用いただけます。効率的な排気システム、 温度センサー、Ruby®による一元管理・モニタリングなどの機能を備えた当社のレーザー加工機は、グラフィックの加工、家具製造、繊維加工など、さまざまな分野で高品質の仕上がりを保証するだけではなく、最高水準の安全性を求めるお客さまに、理想的なソリューションを提供します。とはいえ、優れた安全機能が装備されていたとしても、加工中はレーザー加工機の前から決して離れないことを徹底してください。

安全性に配慮した高速レーザー加工機Speedyシリーズの詳細はこちらから

会員 troGROUP Logo