レーザー加工機による紙の加工技法
レーザー加工機を使ったものづくりで、紙はアイデアや表現の可能性を広げてくれる材料の一つです。紙のレーザー加工は実に多様性に富んでおり、デザインや紙質に応じて様々な種類のカットと彫刻を施すことができます。
ここでは映画チケットをサンプルに、紙を材料としたレーザー彫刻とレーザーカットの加工技法をご紹介します。実際に使用したパラメーターも掲載していますので、ぜひこれらの技法にトライしてみてください。
紙は、Gmund 925シリーズ(290 g/m²)のAqua Silverを使用しています(日本ではトロテックの商材は販売しておりません)。
深めの彫刻
パラメーターのレーザー出力(パワー値)を高く設定すると、深めの彫刻ができます。普段の彫刻と比べてより深く濃い目の彫刻をする場合には、レーザー出力をさらに上げ、スピード(速度)は遅くしたパタメーターに設定します。
この深めの彫刻の色設定には、黒を使用しています。
浅めの彫刻
レーザー彫刻で紙の表面を白っぽく表現することができます。この加工により、紙にエレガントな効果を演出できます。通常の彫刻用パラメーターよりも低いレーザー出力、速いスピードに設定します。
この彫刻加工の色設定には、赤を使用しています。
ヘアライン加工(スクラッチング)
ヘアライン加工の技法は、極細線や微細なマーキングを施したい時に使用できます。
パラメーターの色設定は、ここでは青を使用しています。
飾り枠
飾り枠の彫刻技法はヘアライン加工に似ていますが、仕上りの線幅が異なります。線幅はパラメーターで調整します。
パラメーターの設定で、加工の種類にカットを選択し、希望の線幅によって2~5mmのZオフセット値を調整します。パワーの出力はヘアライン加工の線と同じ値です。色設定は、デザートブルーを使用しています。
ミシン目(破線)のカット
サンプルチケットの番号を囲んでいる円には破線のカットを施しています。グラフィックソフトでこれを作図する場合は、先ず円形の図形を選ぶ、あるいはラインを引いて曲線に変換し、次にダッシュラインの線種を選択します。パラメーターは、次のフィリグリーカットと同じ値です。線色はシアンを使っています。
フィリグリーカット
外周カット
チケットの型抜きは、複雑で入り組んだ曲線がデザインされていなければ、外周カットで切り離します。パラメーターのスピードは5%迄使用できます。レーザー出力はスピードに合わせて調整します。線色はグリーンを使用しています。
印刷のデータ出力設定
パラメーター設定
次にレーザーソフトウェアJRuby®(ルビー)でパラメーターを設定します。
パラメーター設定
技法 | カラー | 加工の種類 | パワー (%) | スピード (%) |
---|---|---|---|---|
深めの彫刻 | 黒 | CO2 彫刻 | 36 | 30 |
浅めの彫刻 | 赤 | CO2 彫刻 | 19 | 40 |
ヘアライン加工 | 青 | CO2 カット | 2.8 | 0.6 |
飾り枠 | デザートブルー | CO2 カット | 5 | 1 |
フィリグリーカット/ ミシン目のカット | シアン | CO2 カット | 8 | 0.5 |
外周カット | グリーン | CO2 カット | 20 | 2 |
ppi/Hz | パス | エアアシスト | Z-Offset | アドバンス |
---|---|---|---|---|
500 | 1 | on | - | 高品質 |
500 | 1 | on | - | 高品質 |
1000 | 1 | on | - | - |
1000 | 1 | on | +4mm | - |
1000 | 1 | on | - | - |
1000 | 1 | on | - | - |
ヒント
パラメーターは、加工機の機種やレーザー出力(W)だけでなく、加工する材料の材質によって異なります。希望通りの加工を実現するために、様々なパラメーターで加工テストすることをお薦めします。また彫刻の濃淡には、グレースケールマトリックスを作成してから材料テストをすると、希望する濃さのパラメーターを見つけ出すのに便利です。
応用編
写真の彫刻
ご紹介した加工技法は、様々な紙の種類に活用できるでしょう。さらに写真を紙に彫刻して、一味違ったタッチを施すこともできます。Ruby®の高度な材料設定では、ディザリングオプションとして「Ordered」を使用します。写真には独自のレイヤー(色)を割り当てて、写真彫刻に個別のレーザーパラメータを設定できます。