隈研吾建築都市設計事務所
Tokyo2020オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる「国立競技場」、そして最近では高輪ゲートウェイ駅のデザインを手がけたことで有名な隈研吾建築都市設計事務所。
同事務所では2019年にトロテックのレーザーカッター「Speedy 360(スピーディ360)」を導入し、模型、看板、インスタレーションの制作などに幅広く活用されています。
レーザーカッターを頻繁に使用している、同事務所の新田氏、松長氏、叶氏にお話を伺いました。
隈研吾建築都市設計事務所
新田 ベン クリストファー/Ben Christopher Nitta (模型チーム、レーザーカッター管理者)[写真中央]
松長 知宏/Tomohiro Matsunaga(3DCGチーム、設計室長)[写真左]
叶子萌/Shiho Yo(グラフィックチーム)[写真右]
(敬称略)
隈研吾建築都市設計事務所
東京都港区南青山2-24-15
- レーザーカッターの用途:模型、看板、インスタレーションの制作
- 使用機種: Speedy 360(CO2:80W)1台、Atmos Duo Plus 230V1台
― レーザーカッターをどのように使用していますか?
【新田氏】模型チームでは、縮尺のある建築模型を効率よく作るのにレーザーカッターを頻繁に活用しています。重要なプレゼンや展覧会のために、精度とクオリティの高い模型を多く作っているので、レーザーカッターを事務所の中でも一番使っている部署になります。
【叶氏】私がグラフィックで制作しているサイン(看板)は、基本的に平面で、原寸大の大きさをレーザーで切っています。原寸大の方が、ある距離感を持って見た時の大きさや厚み、綺麗さが分かります。また、お客様にサインを確認する際も紙一枚で折って見せるより、実物大の方が想像しやすいので、レーザーはその点を効率よく働いてもらっています。
【松長氏】 私のチームでは3DCADを駆使して、3Dデータの利点を活かしたデザインに挑戦しています。私が主に担当しているのは、建物というよりはインスタレーションやパビリオンが多く、納品まで2、3ヵ月しかないなど、短納期で予算も限られているプロジェクトがほとんどです。そのような状況下で思いついたアイデアをすぐにカタチにする必要があるので、厚紙などの材料をレーザーで何百ピースもカットして、それらを組合せながら作ったりします。
3DCAD上でどう見えるかは大体わかるのですが、どのように組み立てることができるかは、実際に手を動かしてみないとわからないことが多いです。そのためにはやはり実際に触れる模型が必要で、それをものすごい速さで切り出してくれるレーザーカッターはすごく役立っています。
― なぜトロテックのSpeedy 360を導入したのですか?
【新田氏】以前の(他社製)レーザー機の経年劣化がひどく、買い替えのタイミングでした。比較検討した結果、(トロテックは)メンテナンス性が良く、保証サポート体制が手厚く、そして集塵機が連動し一体として組まれていることが分かりました。オフィスの貸しビルが屋外排気の配管工事が難しいという関係上、室内排気の集塵システムが含まれていて、尚且つ自動で連動してくれるのは大分助かっています。
また、弊社東京事務所は約220人の内、半分近くを外国人スタッフで占めていますが、文化の違いや言葉の違いを越えて理解されやすいシステムでした。私も実際に教えていますが、基本を押さえれば誰でもすぐに使えるようになる使い易さです。
さらに、トロテックは我々の求めていた高い精度を満たしていました。その辺の信頼ですね。価格に見合っただけの高いパフォーマンスをしてくれるので、価値あるいい買い物をしたという実感があります。
―どうしてトロテックを知ったのですか?
【新田氏】ソニーのクリエイティブ・ラウンジ(ファブ施設)にトロテックのレーザーカッターがあり、私や松長さん、叶さんもそこでの使用経験から慣れていました。各モデルの加工できる最大サイズや、flexxモデルにはファイバーが入っているなどの製品情報も理解していました。
また弊社パリ事務所でも同じトロテックの導入を検討していたので、他社とトロテックを様々な点で比べてみたら最終的にトロテックになったという経緯(いきさつ)がありました。
― 実際に使用してどうですか?
【新田氏】使わない日はないですね。最初は私が鍵を管理していたましたが、今はすぐに使用できるよう常にスリープ状態になっていて、多くのスタッフが入れ替わりで使用して一日4時間以上は稼働しています。
模型チームでは一つの模型を丁寧に作るのに最低2週間はかけます。形状と素材に応じてレーザーカッターと3Dプリントを使い分け、複合させて、最後の組み立ては手作業で制作します。そのワークフローの中でレーザーは欠かせない存在になっています。レーザーありきでどうやって作るのかを逆算しながら加工していくような感じです。
最後の大詰めの段階になると細かい調整が沢山発生するのですが、製作中の模型現物とともに、3DCAD用のパソコンと加工できるレーザーが近くに揃った環境のおかげで、ちょっとした手直しにもすぐ使えて締切直前にも重宝してます。プレゼン模型には絶対必要になってますね。
【松長氏】3DCADで一つの決められたカタチをデザインして、それをまるまる出力するためにレーザーカッターを使うというよりは、レーザーでカットできる材料を使い、その素材の特徴を活かしながら、どうやって組み立てるかを考えることに興味があります。レーザーカッターで造形するということは、同時に組み立て方のデザインをすることと言えるかもしれません。
例えば、リンゴの形を作りたいときに3Dプリンターであればすぐにそのままのカタチが出力できますが、レーザーカッターの場合は、そのまま出力することは不可能なので、どうやってピースをデザインしたらうまく組み立てることができるだろうと考えることになります。
実際、建築の世界やインスタレーションは、当然結構な大きさになるので、3Dプリンターで実物そのものを出そうとすると限界があります。レーザーカッターの加工方法は、実際の素材にそのままスケールアップできることが多いと思います。レーザーカッターでピースを切り出して作ることができれば、実際の素材のスケールでも同じデザインで加工できる可能性があります。
ものすごく芸術的なカタチがあってその造形をひたすら追い求めるというよりは、素材を通じてカタチを作っていくとか、作り方を考えていってカタチにするとかというアプローチが多い事務所だと思います。そういった意味でも身近にこのような加工機があるのは設計者やデザインする人にもいい刺激になります。
【新田氏】模型の話になりますが、画面上の3DCADでデザインしたものを実際に出力してカタチと重さのある模型にしてみると、構造的に無理をしてる箇所が見えてきてデザインにフィードバックするケースもあります。
また隈事務所では沢山のピースが粒子のように集積しているデザインが多いので、模型を作ってそれを検証する時に、スピーディに加工できるレーザーカッターがすごく活きてきますね。繊細なルーバーや木組みの模型表現もレーザーの得意とするところでしょう。これらの点もうちの事務所と相性がいいところだと思います。
― 使用している作図ソフトは?
【松長氏】3Dではライノセラスが多く、2Dでは主にAutoCADを使っています。
【叶氏】イラストレーターを使っています。
【新田氏】レーザーへの出力については、イラストレーターがデフォルトと聞いていましたが、AutoCADからも、社内で一番使われているライノセラスからも直接出せます。その点では、素早くスタディを展開して、色々な試作に取り組むことができるという利点があります。
― 社内トレーニングは?
【新田氏】社内講習は私が中心に英語と日本語で教えています。5名を上限に希望スタッフを集めて、一人当たり30分ほどなので長い時は2時間を超えます。講習では、機械の特性と操作法を説明した上で一人一人にAutoCADからカットする一通りの手順を体験してもらってます。間違いがないように合格した上で使用してもらっているので、今まで火災、ヘッドクラッシュなど大きな故障やトラブルはなく、調子よく使えています。
使用は予約制です。講習を受けた人であれば、Googleカレンダーに2時間枠でブッキングできます。その辺りも最初はソニーさんを参考にしてシステムを考えました。
【松長氏】(事務所には)全くのビギナーはいない印象です。私が学生の時、レーザーカッターがなかったので、3年前に見つけて感動したんですけど、今は大学にレーザーカッターがあって自分の課題で使っていましたというスタッフが結構多くて、建築教育を受けた人たちにとっては割と身近な存在のようです。
【叶氏】トロテックの機械は使いやすいって感じですよね。機械は使いにくいところだけムムっとなるので、(トロテックは)基本ストレスがないです。
【松長氏】本当にストレスなく使いやすいと思います。何よりやり直しが無くなったのが大きいと思います。新田さんのメンテナンスのお蔭もあると思いますが、以前(のマシン)は切れなくて材料が沢山無駄になりました。
加工エリアがある程度大きく手頃なサイズなので、一つの材料から一度に沢山切れます。また、大きい材料も切れて、時間的なメリットが結構出ています。以前(のマシン)では、後ろに待っている人が居て、お互い締切で焦っている状態なので、そういう時程ミスが出て切れてなかったりしていました。
【叶氏】そうでうね。昔はよく並んでました。いまは皆速い。
【松長氏】また出力も強くなったので、模型だけではなくて、実物の制作にも使える実力を持っています。例えば、昨年LIXILギャラリーで発表したプロジェクトでは、NF/サカナクションの山口一郎さん、ANREALAGEの森永邦彦さんとコラボレーションさせていただいたのですが、そこでは衣服と建築の中間のようなインスタレーション作品を作りました。その構造部分として木製のクリノリン(中世のお姫様が着ているフレーム)を作ることになったのですが、形状が決まったのが会期2週間前でした。何とか乗り切れたのは、このレーザーカッターがあったおかげです。外注していたら終わらなかったと思います。
【新田氏】集塵機が一体になり様々な面で前より良くなっています。以前(の他社マシン)は集塵機が連動していなかったので、どうやってスイッチ入れたらいいのかと(社内から)わざわざ電話がかかってきました。
またプレゼン模型をつくるのに、(トロテックの)レーザーカッターは圧倒的にスピーディで効率が良いです。同じものをアルバイトに手作業で切ってもらうより加工時間を短縮して人件費も抑えられるので、全体としてコスパ良く有効活用しています。
レーザーカッターを活用した模型/サイン/オブジェ
隈 研吾
1954年 横浜生まれ
1964年 東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。
1979年 東京大学建築学科大学院修了
1990年 隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで20か国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、他)、国内外で様々な賞を受けている。
2008年 KUMA & ASSOCIATES EUROPE設立 (パリ、フランス)
建築模型にはトロテックのレーザーカッター!
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